アローバース(Arrowverse)とはThe CWのテレビシリーズを中心に拡大してきたDCコミックス原作の海外ドラマシリーズの総称です。
多元宇宙論(マルチバース)を活用することで同じ世界を共有している複数のドラマから成り立っており、2012年にシーズン1が放送された『ARROW/アロー』から拡大したことでアローバース(Arrowverse)と呼ばれています。
今回はアローバースの歴史から全8作品に広がるまでの流れを順番に解説し、ネタバレありでその魅力を語りつくしたいと思います。
アローバースの歴史
アローバースの歴史①『ARROW/アロー』

DCコミックスが原作のテレビドラマはマーベルと比較すると割と昔からコンスタントに行われており、『ARROW/アロー』の企画が最初に立ち上がったのは2001年から放送されていたドラマ『ヤング・スーパーマン(原題:Smallville)』のシーズン6が放送されていた2006年頃に始まります。
『ヤング・スーパーマン』が終了した翌年の2012年、1月早々にCWはグリーン・アローというキャラクターを中心とした新しいシリーズを準備しました。グリーン・アローに目を向けたのは、グリーン・アローがジャスティス・リーグを率いたスピンオフ・シリーズの計画があったことに由来します。最終的に『ヤング・スーパーマン』との関連性をなくし、新たに独自のシリーズとして製作することとし、グリーン・アロー/オリバー・クイーン役にスティーヴン・アメルが抜擢されました。
このシリーズは『ヤング・スーパーマン』とは違い、現実的なアプローチを行うことで世界観を構築し、衣装デザインについても自身で着用できるコスチュームとすることで購入に結び付くということまで考えられ、機能的でありながら自警団にような印象を与える複雑過ぎない衣装がデザインされました。
またストーリーにおいても初期のストーリーでは明確なヴィランが存在しない構成としながら、オリバー・クイーンを徹底的に深堀していくストーリーに仕上げていき、クリエイティブ・チームはクリストファー・ノーランのバットマン映画シリーズからインスピレーションを得た世界観を作りました。
2012年10月、The CWの水曜20時の枠で放送が開始されると、414万人の視聴者数を獲得。これは当時のThe CWの新番組としては高い数字だったそうで、シーズン1はかなり高い評価を得ました。特に最終エピソードはメディアの予想を大きく覆す結果となり、評価が爆上がりしました。
アローバースの歴史②『THE FLASH/フラッシュ』

『ARROW/アロー』が成功したことで、新たにDCコミックスのフラッシュを原案とする計画が進み、フラッシュ/バリー・アレン役にグラント・ガスティンが起用され『ARROW/アロー』のシーズン2に出演することが発表されます。
当初はバックドア・パイロット(テレビシリーズ化を予定している作品のコンセプトを伝えるために制作されるドラマ)を含む3つのエピソードを用意し、シーズン中にフラッシュが誕生する方向で進んで言いましたが、それまでの平均視聴者数が280万人台だった中、第8話が324万人、第9話が302万人と高い数字を獲得。グラント・ガスティンの出演が好印象を受けたと判断し、予算を拡大させ『ARROW/アロー』シーズン2の最終エピソードが放送される前の週にシリーズ化を正式発表しました。
当初予定されていた3つのエピソードには『THE FLASH/フラッシュ』に出演するシスコ・ラモン役のカルロス・バルデスとケイトリン・スノー役のダニエル・パナベイカーが出演し、ストーリーに重要な「STARラボ」の存在を含めるエピソードとなりました。
『THE FLASH/フラッシュ』は『ARROW/アロー』シーズン3開始と同じタイミングの2014年10月、The CWの火曜20時の枠で放送が開始されると、『ARROW/アロー』を上回る480万人の視聴者数を獲得。平均視聴者数は462万人で、The CWでこれまでで最も視聴されたシリーズとなりました。
『ARROW/アロー』が陰なら『THE FLASH/フラッシュ』は陽と言わんばかりに、非常に悲しい背景を背負いながらも明るくて楽しいイメージを軸に街の平和を守るヒーローとして活躍。
フラッシュのヴィランとして有名なリバース・フラッシュも登場し、フラッシュの誕生に関係する因果関係を軸にジャンルのファンだけでなく初心者にも向けた独自のスーパーヒーローショーとなったため、かなり高い評価を得ることができました。
アローバースの歴史③ クロスオーバー『Flash vs. Arrow』

アローバースの醍醐味のひとつが、クロスオーバーイベント。せっかく同じ世界観を共有してるんだからみんな参加型の連動エピソード作っちゃおうよみたいなものです。
その第1弾となったのが『Flash vs. Arrow』という2つのエピソード。これは『THE FLASH/フラッシュ』シーズン1で前半、『ARROW/アロー』シーズン2で後半を放送し、『THE FLASH/フラッシュ』の舞台となるセントラル・シティに『ARROW/アロー』の主要メンバーがやってきて、反対に『ARROW/アロー』の舞台となっているスターリング・シティに『THE FLASH/フラッシュ』の主要メンバーがやってくるという展開を設けました。
どちらも単体のストーリーでありながら前半「Flash vs. Arrow」は434万人、後半「The Brave and the Bold」は392万人と高い視聴者数を獲得し、高い評価を得ました。これをきっかけにシーズンごとにクロスオーバーイベントが行われると大きな話題となり人気コンテンツとなりました。
アローバースの歴史④『SUPERGIRL/スーパーガール』

The CWが『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』と順調に進めている中、2014年にワーナー・ブラザーズ・テレビジョンはDCコミックスのスーパーガールを中心としたテレビシリーズの制作を検討していました。オーディションでカーラ・ゾー=エル役に抜擢されたのはメリッサ・ブノワ。発表されたのは2015年のことで、その後CBSで放送されることが発表されました。ロサンゼルスで撮影され、1エピソードあたり300万ドルとかなり高額な予算が組まれました。
『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』のショーランナーを務めているグレッグ・バーランティもエグゼクティブ・プロデューサーとして参加しており、衣装デザインも同じくコリーン・アトウッドが担当するなど、放送局こそ違えど同じチームの関係者が含まれていました。
2015年10月、CBSの月曜20時の枠で放送が開始。第1話は1296万人の視聴者数を獲得。NBC、ABCと並ぶ3大ネットワークであったこともあり、その年のトップクラスの視聴者数を得ることが出来ました。
同時期、『ARROW/アロー』はシーズン4、『THE FLASH/フラッシュ』はシーズン2が開始されていたため、DCコミックス原作の作品が月火水と連続で放送される状態となります。
アローバースの歴史⑤ クロスオーバー『Heroes Join Forces』

クロスオーバーの第2弾として『THE FLASH/フラッシュ』シーズン2、『ARROW/アロー』シーズン4で放送されたエピソード。初めてストーリーが連動した2話の物語となっており、これに先駆けて『THE FLASH/フラッシュ』シーズン2ではホークガール/ケンドラ・サンダース(シアラ・レネー)が登場していました。
物語はホークガールであることの記憶がないケンドラの命を狙うヴィラン、ヴァンダル・サベージ(キャスパー・クランプ)が登場。科学で解明できない敵に対しバリーがオリバーに協力を求めることで始まるストーリーで、ホークマン/カーラー・ホール(フォーク・ヘンチェル)も登場します。
両シリーズのクリエーター兼製作総指揮者でもあるアンドリュー・クライスバーグは合計2時間にわたるストーリーを1話ずつに分割し構成するというのは正気ではなかったとコメントしており、このクロスオーバーは単一作品ではなくそれぞれのシーズンに影響を与えるエピソードも含め実に細かい設計がなされました。
映画であればもっと入念な構成に踏み込むこともできると思いますが、あくまで放送日が確定している連続ドラマで行っているというのが、海外でも非常に稀な挑戦だといえるでしょうね。
また今作のおかげで『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』の下地もできちゃう上に、バリーにとってもオリバーにとってもその後のエピソードに大きく影響する話も盛り込まれたストーリーとなりました。
アローバースの歴史⑥『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』

『SUPERGIRL/スーパーガール』の製作が発表された2015年の同じ時期、The CWでは『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』に登場するキャラクターに焦点を当てたスーパーヒーローのチームアップショーと呼ばれるスピンオフシリーズの計画が進められていました。そして2015年5月、『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』というタイトルが発表され、DCコミックスに登場するキャラクターを生かした完全オリジナルストーリーの製作に着手することに。
シーズン1の主要メンバーは『ARROW/アロー』からホワイト・キャナリー/サラ・ランス(ケイティ・ロッツ)、アトム/レイ・パーマー(ブランドン・ラウス)、『THE FLASH/フラッシュ』からはファイヤーストーム/マーティン・シュタイン(ヴィクター・ガーバー)、同じくファイヤーストーム/ジェファーソン・ジャクソン(フランツ・ドラメー)、ヒートウェーブ/ミック・ロリー(ドミニク・パーセル)、キャプテン・コールド/レナード・スナート(ウェントワース・ミラー)、そしてクロスオーバー「Heroes Join Forces」からホークガール/ケンドラ・サンダース(シアラ・レネー)、ホークマン/カーラー・ホール(フォーク・ヘンチェル)が出演。
そして新たなキャラクターとしてリップ・ハンターを主役の立ち位置としてアーサー・ダーヴィルが起用されます。
2016年1月、木曜20時の枠で放送が開始。第1話は321万人と悪くない視聴者数を獲得しています。『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』が終わる2016年5月のタイミングで終了する時期に合わせているため、エピソード数は他の作品より少ないのも特徴です。
また主に『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』に登場するヴィランが再登場するのが特徴ですが、シーズン1では『Heroes Join Forces』のヴァンダル・サベージ(キャスパー・クランプ)が登場。またタイムトラベルを軸にストーリーが展開するため、サイエンス要素の側面で観てもおもしろい作品です。
アローバースの歴史⑦ クロスオーバー『Invasion!/インベージョン!』

シーズン2が始まった2016年10月からThe CWへ移行した『SUPERGIRL/スーパーガール』を含め、『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』、『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』のキャラクターが総出演するテレビドラマでは異例すぎるクロスオーバーイベントが行われました。
マーベルで例えるとアベンジャーズのドラマ版のようなもので、DCコミックスによって1988年後半から1989年初頭に発行された3冊のコミック限定シリーズとクロスオーバーイベント「Invasion!」を原作として、全3話構成のストーリーが展開されました。
『Invasion!/インベージョン!』前のストーリー
『Invasion!/インベージョン!』が始まるまでにそれぞれの放送でストーリーに通ずる展開が組み込まれているため、いきなり『Invasion!/インベージョン!』を見始めても理解できない描写が多く含まれています。
[1]スーパーガールの登場
シーズン1後半で、アローバースへの参加が決まった『SUPERGIRL/スーパーガール』。『THE FLASH/フラッシュ』のシーズン2から始まったマルチバースの概念を利用し、カーラ・ダンバースが住む地球をアース38と定義したうえで、フラッシュ/バリー・アレン役のグラント・ガスティンが出演する「Worlds Finest(邦題:フラッシュ)」と題した特別エピソードが放送されました。
キャットコー・メディアにやってきたシヴォンことシルバー・バンシーの超音速の叫び声で窓の外に頬りだされてしまったカーラ。同じとき、スーツに固定されたタキオン装置をテストしていたバリーは開いた裂け目を抜け出すと異なるアースにやってきてしまう。窓の外に頬りだされてしまったカーラを見つけたバリーはカーラを助け、お互いに有名なはずなのに互いを知らないことを不思議がるも能力を見せ合うことですぐに意気投合。カーラはタキオン装置が壊れてしまい、アース1へ帰る手段を失ったバリーを手伝い、バリーは2人同時に現れた敵に対処するために手伝うことに。
共に大人気海外ドラマ『glee/グリー』での共演経験があったことで、ドラマのファンからも注目されたエピソードとなりました。またこのエピソードによってカーラはマルチバースが実在することを知ります。
[2]フラッシュポイント
原作のフラッシュをご存じの方なら有名すぎるエピソードでもあるフラッシュポイント。
シーズン3の第1話で採用されたフラッシュポイントはその後のストーリーにも残る影響を与えました。ここは話を進めるうえで非常に重要なエピソードのため、どういったことが起きたのか簡単に説明します。
父親を殺されたバリーは両親を共に亡くし、自暴自棄になっていた。もう十分戦ったと感じたバリーは過去に戻り、リバース・フラッシュを捕まえることで母親が殺されることを阻止し、歴史を変える。一家団欒で充実した日々を過ごしつつも、本来の歴史の影響で仲良くなったアイリスとの接点がなくなってしまったため、ジッターズにいるアイリスに話しかける。その頃より頭痛に悩まされるようになり、監禁しているリバース・フラッシュに問いただし、本来の時間軸の記憶が消えていっていることを知る。この時代のフラッシュであるアイリスの弟が敵との戦いで死んでしまい、本来の時間軸の記憶がなくなりかけていたバリーは仕方なくリバース・フラッシュを解放し、母親を殺させる。時間軸を変えるきっかけを元に戻したバリーだったが、シスコの兄は死に、ケイトリンはキラー・フロストに目覚め始め、ジョーとアイリスは喧嘩しているなど本来の時間軸に戻ることはなかった。本来の時間軸に戻すため再びバリーはタイムトラベルを繰り返そうとするが、そこでアース3のフラッシュに止められ、時間軸は完全に元通りにならないことを知る。断念したバリーはチームに話し、シスコはバリーのせいで兄が死んだため拒絶してしまう。
『Invasion!/インベージョン!』はこれらの軸がある前提で話が進むため、ドミネーターと戦うためにチーム一丸とならなければいけないのに、チームはバラバラになってしまいます。
セントラル・シティに落下した隕石を調査士に出向いたバリー・アレンは、エイリアンが出現する宇宙船であることに気づき調査を開始する。STARラボにやってきたライラ・マイケルズはチームに、エイリアンはドミネーターとして知られており、1950年代に地球に上陸したが、不思議なことに去ったと語る。バリーは、オリバー率いるチーム・アロー、レジェンドのメンバー、さらにアース38からカーラ・ダンバースを集める。スーパーガールと初対面のチームはドミネーターに対抗すべくSTARラボでトレーニングを開始。カーラはオリバー・クイーンの信頼を得ようと奮闘するが。あまりの力の差にペースを乱されるオリバーはカーラと距離を置こうとする。シスコ・ラモンは、未来のバリーがリップ・ハンターに送ったメッセージを見つけたことで、自身が起こしてしまったフラッシュ・ポイントがみんなにバレてしまい、チームが分断。そんな中でドミネーターは着々とヒーローを倒すための準備を進めていく。
『Invasion!/インベージョン!』は大成功
全3話すべてのエピソードでおよそ100万人上乗せした視聴者数をそれぞれが獲得。特に『ARROW/アロー』は既にシーズン5に突入しており、代表的なヴィランも倒し切っていたため視聴者数も減少傾向にありましたが、シーズン最大の視聴者数を獲得しました。
フラッシュもシーズン3で唯一400万人以上の視聴者数を獲得し、『ARROW/アロー』とほぼ同じ視聴者数をキープしていた『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』も同様の流れとなりました。
テレビ番組でリアルタイム視聴を連続で獲得するのは2016年でも十分厳しいものだったと思いますので、そう考えるとかなりの成功だったと考えられます。さらにRotten Tomatoesでの評価もかなり高いため、内容も十分楽しめると認識されているように感じます。
またクロスオーバーイベントの欠点として、日本ではすべてのシーズンが視聴できるようにならないと話の全てが把握できないということがあるため、このクロスオーバーイベントから単体でDVD化されるようになり、今作も「インベージョン!最強ヒーロー外伝」としてリリースされました。
アローバースの歴史⑧ クロスオーバー『Crisis on Earth-X/クライシス・オン・アースX』

『Crisis on Earth-X/クライシス・オン・アースX』は『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』、『SUPERGIRL/スーパーガール』、『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』のキャラクターが総出演するテレビドラマでは異例すぎるクロスオーバーイベント。その規模は『Invasion!/インベージョン!』を超え、『SUPERGIRL/スーパーガール』でもエピソードが放送され全4話と大規模なクロスオーバーとなったエピソードです。
敵はマルチバース「アースX」のグリーンアロー、スーパーガール、そして彼らに加わったリバース・フラッシュ。アースXはドイツが第2次世界大戦に勝ち、ヴィランが世界を牛耳っている世界です。バリーとアイリスの結婚式のために偶然にも終結していたヒーローたちの元に現れ、過去最悪の最も手強いヴィランと対峙します。
2017年9月、クロスオーバーのタイトルを明らかにした声明の中で、製作責任者のマーク・グッゲンハイムとアンドリュー・クライスバーグは、「私たちが子供の頃に一緒に育ち、楽しみにしていた毎年恒例のジャスティス リーグ/ジャスティス ソサエティ[コミック シリーズ] のクロスオーバーを思い起こさせるように考えられた。」と述べている通り、連続ドラマの規模感でありながらかなりスケールの大きなストーリーとなっています。
アローバースの歴史⑧『Black Lightning/ブラックライトニング』

1年以上かけて構想が練られた『Black Lightning/ブラックライトニング』は、当初Foxへ売り込まれました。これが2016年の話で、2017年2月、Foxはこのプロジェクトを進めないことを選択。これを受けてThe CWがパイロット版を発注。Foxのために書かれたオリジナルのパイロットスクリプトは破棄され、代わりに、ピックアップ・オーダーに関するネットワークの最終決定に先立って、短いプレゼンテーションが撮影されました。同月、クレス・ウィリアムズがジェファーソン・ピアース/ブラック・ライトニングの主役として発表され、その他のキャストも発表されました。
アローバースの作品は主にバンクーバーで撮影されていますが、今作はジョージア州ディケーターとその周辺のアトランタ地域で撮影されています。撮影中に使用されたバック・ロットは、The CWで放送されていたドラマ『ヴァンパイア・ダイアリーズ』の撮影で使用されたものと同じものでした。
The CWはプロデューサーのサリム・アキルをショーランナーに指名し、シリーズ化が決定。アローバースには属さない単体のヒーロードラマとして2018年1月、月曜21時の枠でシーズン1が放送開始されました。日本でも特殊な動きとなり、1週間遅れでNetflixで配信が開始されることに。月曜21時の枠で開始したため、当時同じ枠で放送されていた『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』シーズン3は月曜20時の枠に移動して放送されていました。
シーズン1はかなり高い評価を得たこともあり、シーズン2への更新が決定。シーズン2もアローバースとの接点はないままストーリーが構築されました。

アローバースの歴史⑨ クロスオーバー『Elseworlds/エルスワールド』

2018年のクロスオーバーイベント。今作は『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』は参加せず、『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』、『SUPERGIRL/スーパーガール』の3番組で補うエピソードとなり、シリーズが決定していたケイト・ケイン/バットウーマン、『SUPERGIRL/スーパーガール』からロイス・レインが初登場。バットウーマン役にルビー・ローズ、ロイス・レイン役にビッツィー・トゥロックが起用されました。
ストーリーは2019年の過去最大クロスオーバー『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』へ向かうために構成されており、さらにこの時点で発表こそされていないもののおそらく決まっていた『ARROW/アロー』の終了とも紐づけ、アローバースのメインキャラクターを『THE FLASH/フラッシュ』、『SUPERGIRL/スーパーガール』へ移行させることも視野に描かれていたと思います。
『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』に大きく関わるキャラクターとしてマー・ノヴ/モニター役にラモニカ・ギャレットが起用され、『Elseworlds/エルスワールド』に初登場。以降『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』が始まるまでに、すべての番組に出演しました。
現実が改変され、オリバーがフラッシュに、バリーがグリーンアローに入れ替わることからストーリーが展開し、誰も入れ替わった事実を信用しないことから2人はアース38のカーラに会いに行きます。その後入れ替わった事実を理解したチームはアース1に迫る危険に対処すべく、シスコがアース38へ。カーラとクラークと共にアース1へ戻ったヒーローたちは問題に対処し、シスコのバイブでゴッサム・シティにいる謎の男性同士のやり取りが現実改変の原因だと突き止め、オリバー、バリー、カーラの3人はゴッサム・シティへ向かいます。
壮大なクロスオーバーのキックオフストーリーでありながらもしっかりとクロスオーバーとして成立されていた今作も高い評価を得ています。特におもしろいのは、バットマンの存在。オリバーだけが噂話だと信じていて、バリーはいると信じ、カーラの発言から見てもアース38のバットマンの存在を確認しているように見受けられます。このことからもアローバースではバットマンはかなり年上であることがわかり、登場もしません。
またこの放送が決定した時期には『ARROW/アロー』がシーズン8で終了することが発表され、主要キャストのひとり、フェリシティ・スモーク役のエミリー・ベット・リカーズがシーズン7をもって降板することも発表されました。

アローバースの歴史⑩『Batwoman/バットウーマン』

『Elseworlds/エルスワールド』で初登場したケイト・ケイン/バットウーマン。放送時点ではパイロット版の脚本ができた段階でした。
パイロット版ではゴッサム・シティを拠点とする自警団バットマンの失踪から3年後、ジェイコブ・ケインと彼の民間警備会社クロウズは、市長マイケル・エイキンスが率いるガラを主宰し、バットシグナルをオフにしました。ジェイコブの継娘メアリーに実の娘であるケイトに電話するよう促しました。海外から戻ったケイトは、アリスが父親を標的にしていることを知り、従兄弟で億万長者のブルース・ウェインを探し始めると、ブルース・ウェインがバットマンであったことを知ります。
The CWは2019年5月にシリーズ化を発注し、製作人による構築が始まります。2019年10月、日曜20時の枠で放送が開始され、ルビー・ローズの演技は賞賛されましたが、翌2020年、COVID-19パンデミックの影響が直撃し、全22話で予定されていたシリーズは全20話に短縮されました。
アローバースの歴史⑪ クロスオーバー『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』

『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』は『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』、『SUPERGIRL/スーパーガール』、『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』、『Batwoman/バットウーマン』の5番組のクロスオーバーとなった作品。
5番組の出演者に加えて、シーズン3からアローバースへの参戦が決まった『Black Lightning/ブラックライトニング』からクレス・ウィリアムズが初参戦。さらにThe CWは過去最大級のイベントにすべく、これまで放送されてきた多くのDC映画、及びDCドラマの出演者へオファーをかけます。これは放送決定以降頻繁に海外メディアで報じられ、話題性を高めていきました。
結果的に『怪鳥人間バットマン』、『バットマン(1989年版映画)』、『超音速ヒーロー ザ・フラッシュ』、『ゴッサム・シティ・エンジェル』、『SMALLVILLE/ヤング・スーパーマン』、『スーパーマン リターンズ(映画)』、『LUCIFER/ルシファー』、『タイタンズ』、『ドゥーム・パトロール』、『スワンプシング』と多くの過去作品が紐づくことに。特に『バットマン(1989年版映画)』からマイケル・キートンが30年ぶりにバットマンが演じるのではないか?と話題が広がりましたが、これはさすがに実現には至りませんでした。
ベストセラーとなった同名のコミック、『クライシス・オン・インフィニット・アース』を軸にマルチバース(多元宇宙)の世界観をフルに活用し、マー・ノヴ/モニター役のラモニカ・ギャレットはヴィランとなるアンチモニターの2役を演じ、『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』からはレイ・パーマー/アトム役のブランドン・ラウスはかつて出演した『スーパーマン リターンズ』でのクラーク・ケント/スーパーマンの2役を演じました。
クライシス(重大な危機)に備えるため、関連する事前放送としてマー・ノヴは『ARROW/アロー』シーズン8でオリバーに、『SUPERGIRL/スーパーガール』シーズン5ではマーシャン・マンハンターに様々なアイテムを収集させる任務を与え、『THE FLASH/フラッシュ』シーズン6では未来のアイリスの記事が書き換えられ、数十億人の命を救うためにフラッシュが死ななければならないことをマー・ノヴがバリーに伝えます。バリーは未来へ行き、その事実を受け入れなければならないストーリーを構築していきました。『Black Lightning/ブラックライトニング』ではあるエピソードのラストで空が赤くなる描写で終わり、『クライシス・オン・インフィニット・アース』3話に続く結末を与えられました。
この規模で行うことで、海外メディアではやはりマーベル映画『アベンジャーズ/エンドゲーム (2019)』と比較され、製作責任者のマーク・グッゲンハイムはインタビューで「バリーとオリバーにとって、エンドゲームを連想させる感情的な結末がある」とコメント。マーベルとは違い、事前情報は隠すことなく次々と発表され、テレビ番組でありながら映画の規模を有するシリーズとなりました。
『ARROW/アロー』はシーズン8で終了することが発表されていたため、アローバースとしては最後のクロスオーバーであると見なされています。しかし『ARROW/アロー』終了以降、CWバースと改名したThe CWの動きとは異なり、ファンはアローバースと表現し続けましたが、2020年、COVID-19パンデミックの影響が直撃した影響で撮影が思うようにいかず、『Black Lightning/ブラックライトニング』、『SUPERGIRL/スーパーガール』の終了からもわかる通り事実上複数の番組で構築されるクロスオーバーは以降行われませんでした。
『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』のアフターストーリーとして、『Batwoman/バットウーマン』、『Superman & Lois/スーパーマン&ロイス』のクロスオーバーが行われる予定でしたが、これもCOVID-19パンデミックの影響でキャンセルされています。もしこれが放送されていれば新たなストーリーの軸が展開されていたかもしれませんが、ルビー・ローズがシーズン1で降板してしまったため、クロスオーバーの継続性は放送されていてもうすかったかもしれませんね。
Rotten Tomatoesの評価は第1話が8.97/10、第2話が7.69/10、第3話が9.14/10、第4話が7.4/10、第5話が9.84/10と完全に近い高評価を得ています。特に『ARROW/アロー』では全10話のうち第9話で放送され、スティーヴン・アメルの事実上の最後の出演作となり、ストーリー上においてもオリバーは称えられました。

2020年以降のアローバース
① COVID-19パンデミックの影響
『ARROW/アロー』が終了して以降、2020年以降のアローバースはわかりやすく落ち込んでいきました。
2021年から始まった『Superman & Lois/スーパーマン&ロイス』はクライシス以降に設定が変わってしまい、独自の展開をしていたためアローバースに属さずに2024年のシーズン4まで放送されました。つまり、順調だったのは事実上一番人気の『THE FLASH/フラッシュ』のみとなっていました。
『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』直後はCOVID-19パンデミックの影響で撮影ができず、エピソードを減らさざるを得ませんでした。2つのエピソードが縮小された『Batwoman/バットウーマン』以外にも、『THE FLASH/フラッシュ』は全22話で予定されていたシリーズは全19話となり、シリーズ後半のヴィランとなるエヴァとの戦いはシーズン7に持ち越しされました。
『SUPERGIRL/スーパーガール』も全22話で予定されていたシリーズは全19話となりました。メリッサ・ブノワは同番組に出演していたクリス・ウッドと2019年に結婚し、2020年に出産。この流れもあってシーズン6で終了が発表されました。終了の理由は公表されていませんので、降板を申し出たのか話し合ったうえでの結論なのかはわかっていません。
『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』はシーズンが始まる前の2019年のうちにほとんどの撮影が終了していたため、全15話のエピソードは縮小されることなく放送されました。
『ARROW/アロー』のスピンオフとして、オリバーの娘ミア・スモークに焦点を当てた『Green Arrow & The Canaries/グリーンアロー&キャナリーズ』のシリーズ化が進められていましたが、最終的にシリーズ化はされないことが決定。
『Black Lightning/ブラックライトニング』も2021年、シーズン4を持って終了。アローバースの番組は視聴者数の減少が大きな問題となっていましたが、それに加えてCOVID-19パンデミックの影響があったことでいくつかの番組が終了することになり、『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』のラストで用意されたテーブルに全員が座ることはありませんでした。
『Batwoman/バットウーマン』はルビー・ローズがシーズン1で降板したことでストーリーの大幅な改変が必要になり、シーズン2ではライアン・ワイルダー役にジャビシア・レスリーが起用されました。ケイト・ケインが飛行機墜落事故で死亡したと思われる後、ホームレスの元犯罪者ライアン・ワイルダーが飛行機の残骸からバットスーツを見つけ、バットウーマンのマントを手に取り、母親の死を報復します。その後ケイト・ケイン役には新たにウォリス・デイが起用されました。
どの番組も共通しているのが、COVID-19パンデミックの影響で大人数がひとつの画面に映る頻度が極端に減り、チームが集まらず少人数体制で撮影が行われたため、大掛かりなクロスオーバーの後に見るにはどれも物足りないシーズンとなっていました。
この状態の中で『Crisis on Infinite Earths/クライシス・オン・インフィニット・アース』に一瞬登場した『Stargirl/スターガール』がアローバース入りを果たします。コートニー/スターガール役のブレック・バッシンガーはクロスオーバーを期待していましたが、残念ながらクロスオーバーの実現には至らず、2022年にシーズン3をもって終了となりました。
② 実験的クロスオーバー『Armageddon/アルマゲドン』

クロスオーバーが成り立ちにくい状態の中、COVID-19パンデミックの影響も落ち着き、『THE FLASH/フラッシュ』で全5話の特別エピソード『Armageddon/アルマゲドン』が放送。番組を跨がずに『THE FLASH/フラッシュ』に各番組の出演者がゲスト出演することでクロスオーバーを実現させました。
大掛かりに多くのゲストが登場するわけではありませんが、バリーのストーリーを軸に、ライアン・ワイルダー/バットウーマン役のジャビシア・レスリー、レイ・パーマー/アトム役のブランドン・ラウス、ジェファーソン・ピアース/ブラック・ライトニング役のクレス・ウィリアムズ、アレックス・ダンヴァーズ/センチネル役のカイラー・リー、ミア・クイーン/グリーン・アロー役のキャサリン・マクナマラ、ライアン・チョイ役のオスリック・チャウ、エバード・ソーン/リバース・フラッシュ役のトム・キャヴァナー、ダミアン・ダーク役のニール・マクドノー、ノラ・ダーク役のコートニー・フォードが出演しました。
③ アローバースの終焉
『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』はシーズン7まで放送されましたが、打ち切りが決定してしまい、ストーリーとしては非常に中途半端な状態となってしまいました。ショーランナーのケト・シミズは「The CWからシーズン8への更新はないと告げられました。」と発表。『ARROW/アロー』シーズン2より出演し、スティーヴン・アメルの次にアローバースへの出演歴が長かったサラ・ランス役のケイティ・ロッツは残念がっています。『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』はアローバースの中でも異質で、完全オリジナルストーリーでありながら評価は悪くなかったからです。
そして2022年8月、『THE FLASH/フラッシュ』が2023にかけて放送される予定のシーズン9で終了となることが発表されました。過去最短となる全13話構成となり、1話~4話は「Rogue War」というミニストーリー、そして10話~13話は「A New World」という全4話のストーリーが組まれ、1話限りでスティーブン・アメルが復帰するなど大きな話題を呼びました。
アローバースの魅力

アローバース最大の魅力は、積極的に多くのヒーロー、ヴィランを登場させ、映画ではなくドラマのためエピソードも豊富な点にあります。
完成度で言えばマーベル映画の方が高いかもしれませんが、テレビの連続ドラマという脚本の締め切りがはっきりとあるスケジュールの中で描いているという点を妥協できるかどうかにもよりますが、それぞれの番組に魅力があります。
『ARROW/アロー』で言えばオリバー・クイーンのダークヒーローからいい人間になるためのヒーローを通しての人としての成長、『THE FLASH/フラッシュ』は圧倒的なチーム力、『SUPERGIRL/スーパーガール』は宇宙規模のスケールとオフィスで働く仕事の側面でのストーリー、『DC’s Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』はまとまりのない自由奔放な集まりがチームとなるまでのストーリーとタイムトラベル要素、『Batwoman/バットウーマン』はバットマンを継承したダークすぎる世界観、『Black Lightning/ブラックライトニング』は黒人社会の背景に織り交ぜたヒーロー要素。それぞれマーベル映画にはない要素かもしれません。
そしてマルチバースやタイムレスの概念など、マーベルより先に積極的に科学的要素を採用している点もアローバースの魅力。早々にマルチバースを採用したことで早い段階で番組間のコラボレーションを成立させ、クロスオーバーイベントとしてより楽しめる作品も作りました。
つまりDCコミックが好きな方はもちろんですが、DCコミックの知識がない方でも十分に楽しめるドラマになっているのがアローバースならではと言えます。特にどの作品も最低限シーズン1はかなりおもしろく、アメコミ映画が好きではなくても楽しめるはずです。
シーズン1では『ARROW/アロー』の場合、映画『ダークナイト』の世界観にインスパイアされたクライムストーリーのような要素を織り交ぜ、『THE FLASH/フラッシュ』はキャラクターがもともと人気だったのに加えて、当初はヴィランとして登場したレナード・スナート役のウェントワース・ミラー、ミック・ロリー役のドミニク・パーセルと、大ヒットドラマ『プリズン・ブレイク』のコンビが2人揃って出演するなどの話題性も用意し、『SUPERGIRL/スーパーガール』にはカーラの上司キャット・グラント役に大ヒットドラマ『アリー my Love』で知られるキャリスタ・フロックハートが出演し、ヒーローの側面とは別に働く女性の要素も描きました。
大人気海外ドラマ『glee/グリー』での共演経験があったグラント・ガスティンとメリッサ・ブノワが『glee/グリー』を彷彿とさせるエピソードを用意するために、特別ゲストとして『glee/グリー』からダレン・クリスが出演するエピソードもあり、視覚的にもアメコミ好き以外の層へのサービスも欠かしません。このようなエピソードが用意できるのも、映画ではなくドラマならではだと思います。
アローバースを楽しむ
今回はCWアローバースの歴史を徹底解剖として、全9作品に加えてクロスオーバーイベントなども含め、それぞれの歴史をネタバレありでご紹介してきました。
気になった方、アローバースが好きな方は是非コメントお待ちしています。

コメント
コメント一覧 (4件)
フラッシュやっと見たばっかりなのに来年終わるの悲しい…
アローが好きでした。
ヤング・ジャスティスに続くような展開にしてほしかったです。
アロー最終話の一個前の話で未来のウィリアムが誘拐され、JJの記憶も戻ってたけどその伏線は未回収のままなのかな?
「グリーンアロー & キャナリーズ」がキャンセルされずに作られていれば回収できたんでしょうけど、もう未回収のまま終わりそうですね。